2026年10月1日からカスタマーハラスメント、略してカスハラ対策を講じることが事業者の責務となります。カスタマーとは顧客を意味しますが、保育園や幼稚園、学校等の保護者もカスタマーに含まれることになっています。今までは「保護者対応」と呼んでいましたが、これからは「カスタマー対応」になるのでしょうか。なんだか少し味気ないですね。
でも保護者がカスタマーと呼ばれることまでは何とか理解できるものの、いまだカスタマーに該当するか否かが明確ではないカテゴリーがあります。保育園、幼稚園、学校の園児児童生徒です。同じく考えれば学習塾やスポーツ教室、あるいは子どもや成人問わず福祉施設の利用者はカスタマーに該当するのしょうか?
例えば学校で先生が児童生徒から暴力を受けた場合はカスハラになるのでしょうか?一般的にはカスタマーとはサービスを受ける対象ということで定義されていますが、学校の児童生徒はサービスの対象者なのか?ここは諸説あります。文部科学省は、児童生徒の先生に対する暴力や暴言はあくまでも生徒指導上の問題であり、カスハラとは一線を画す、と解釈しているようです。
民間の学習塾やスポーツ教室、ピアノ、バレエ、英語などの文化的教室の場合は月謝や利用料を払って利用している子どもたちなので、カスタマーに該当することは間違いないと思います。しかし、18歳未満の児童の場合、その行動の責任を負うのは保護者なので、利用者である子どもたちのハラスメントは保護者に対してその申し立てがあると思われます。
これは公的な福祉サービス施設でも同様でしょう。例えば一般的に学童保育と呼ばれる放課後児童クラブや児童館などが挙げられます。子どもたちが運営スタッフに対し暴行や暴言などのハラスメント行為をした場合、事前に事業所が文書やHPなどで「こういう行為はハラスメントであり、再三の指導や警告に従わず、解決に向けて保護者の協力が得られない場合は利用を拒否する場合がある」と明示していれば、様々なプロセスはあるだろうものの、場合によっては利用できなくなる可能性も出てきます。
先日のニュースで横浜市の認可保育所で起きた保育園児同士の「いじめ」事案について、市はそれを「いじめに相当すると考えられる行為」と整理しました。未就学児は、いじめ防止対策推進法の直接対象ではないため、この表現になったようです。ただ表現は緩やかでも、コンプライアンスが再重視される現代、保育園児のような低年齢の子どもの行為すら「いじめに近いもの」と公に認められ、保育所がその責任を負うことになります。
この場合、保育所が「いじめ」事案の解決に早期に取り組み、保護者にも報告、解決への協力依頼をしたのにも関わらず保護者が努力を怠ったとしたら責任を問われることになるのでしょう。同じように考えれば保育園や幼稚園の園児や学校の児童生徒が先生に暴行や暴言を繰り返し、学校が対策したにもかかわらず保護者が協力しなかったとしたら、これがカスハラに該当する時代が近い将来、到来するかもしれません。
それは学童保育等でも同様でしょう。公的なサービスとはいえ、学童保育の利用は義務ではなく、そのサービスが必要とされる子どもや家庭に対し提供されるものであるので、その解決に向けて保護者が協力しなければ「カスハラを実行する利用児童の保護者」が該当者と認定され、学童保育を利用できなくなる可能性は今後、十分に考えられると思います。
さて、ここで一つ、カスハラに該当するのかどうか、さらに判断が難しいケースを紹介します。障がい児者施設を利用する人々のスタッフに対する「有形力の行使」です。ただ、ここではあえて暴力、暴行、暴言という表現は控えたいと思います。他に適切な表現方法を持ち合わせていない、あるいはその表現方法を誤ってしまうなどの場合、暴力や暴言などが発生してしまうことがありますが、これらは多くの場合、意図的に誰かを傷つけようとするものではないので、ここでは「有形力の行使」、略して有形力と表現することにしましょう。
英語ではこれを「チャレンジング・ビヘイビアー」と呼んでいます。直訳すると「対応が難しい行動」ということになるでしょう。特別支援学校の教員をしていた頃、このようなお子さんが何人かいました。ある年、有形力が目立つお子さんの担任になり、対応に試行錯誤していた際、その行為が表面化する「場面」に共通する条件があるのではないかと考えました。1か月間、このお子さんに関係するあらゆるデータを記録したところ、有形力が行使されやすい条件を見つけ、そこから改善に向けたスキルトレーニングを開始したところ、見事に落ち着き、保護者から感謝されたことがありました。
天気、気温、湿度、風速、体温、食事の内容、睡眠、排泄状況、家庭での様子などの記録を集め、表やグラフにまとめたのですが、有形力の行使があった日には必ず共通した特徴がみられました。いまでいう「データサイエンス」なのだと思います。20世紀の出来事ですので、パソコンが出始めの頃であり、もちろんそのような用語はなかったのですが、方法は同じですよね。データサイエンスから有形力を軽減することができるのかもしれません。
さて、話はそれてしまいましたが、このような当事者による有形力の行使はカスハラに該当するのでしょうか?次回、この話題を続けたいと思います。