このところ「親なきあと」「親あるうちに」や障がいのある方の健康、命の話を続けています。その中で、少し前まで日本の福祉では知的障がいがある方が高齢になることはあまり想定されていなかった、と伝えました。しかしいま、医療の発展などにより70代、80代まで元気に過ごす方が増え、新たに「高齢知的障がい者の支援のあり方」が注目されています。

 千葉県のある地域には高齢になった知的障がいがある方のグループホームがあります。そこを設立された方に話を聞くとこんな話を教えてくれました。「認知症と知的障がいは似ていると考えている人が多いかもしれないが、実は全く異なっている。認知症の支援方法では知的障がいがある方の高齢支援はできない。そこで自分は高齢になった知的障がい者用のグループホームを作り、新たな支援方法を追求することにした」。

 大変すばらしい気づきであり、それを即実行に移したこの方には脱帽です。実は一般の高齢者施設の職員に聞くと、知的障がいがある高齢者をケアすることがあるが、その行動は独特であり身体的、心理的な支援の知識では追いつかないことがある、と聞いていました。しかし、以前にもお伝えしたように高齢の知的障がい者を支援する方法についてはそれまで研究が進んでいませんでした。「知的障がい者は高齢にならない(ある年齢で亡くなってしまう方が多い)」という誤った常識(?)があったからです。

 知的障がいがある方への支援の中で、最も重要なのはコミュニケーションの取り方であると考えています。自らの思い、考え、気持ちを本人に応じた形で他に伝えることができるか。そして他からの働きかけを本人に応じた形で受け取り、理解し、対応できるか。発達段階にもよりますが、これがある程度できれば生活において困難になることが大きく減るでしょう。そしてこれらの方法を教えるのは学校や放課後等デイサービスだと思います。

 言葉が苦手であれば絵カードや写真カードを使って、あるいは手話やボディランゲッジを使って、または最近ではスマートフォンやタブレット使って本人に応じた方法でコミュニケーションし、成人し一人で生活しても、それが自らの意志決定による生活スタイルであれば自立し社会参加している、といえるでしょう。

 しかし認知症の方の場合、そして特にコミュニケーションが取りづらい方であればやり取りが難しくなり、少し前に伝えたことも忘れてしまいがち、ということになればプロである介護職の方々はその方に応じた様々な方法でアプローチしているのでしょう。むしろコミュニケーションよりも心理面でのケアが重要になっているかもしれません。

 では知的障がいがある方は認知症になるのでしょうか?その可能性はあるようです。そもそも知的障がいとは先天的(まれに後天的)に言葉、記憶、行動面で実年齢よりも学びにくい、覚えにくいけどいろいろな面でゆっくりと発達していくといった状態を指します。しかし認知症は逆に「今までできていたことができなくなっていく」状態をいいます。見分けづらいのですが、それでも知的障がいがある高齢者が「今までできていたことが少しずつできなくなってきた」としたらそれは認知症の可能性があるかもしれません。

 ダウン氏症候群(ダウン症)の方は心臓や目に合併症を持って生まれてくることがありますが、多くの場合、知的障がいを併発しています。しかし私もダウン症のお子さんを何度も学校で見てきましたが、明るく行動的なお子さんも多く歌ったり踊ったりダンスが好きだったり、みんな体を動かす機会を楽しみにしていました。

 ただ専門家の話によれば40代から認知症の原因の一つであるアルツハイマー病と似たような症状が出ることがあり、体を動かすことを好まなくなると知りました。研究の結果、ダウン症の方の脳内にアルツハイマーを引き起こす物質が認知症と同じく確認された、とのことでした。やはりいままでできていたことがしづらくなることが特徴の一つだったようです。

 いまはもう各地で高齢知的障がい者の福祉的支援について研究が進んでいます。スタートは遅かったかもしれませんが日本の研究力があれば近いうちにガイドブックやマニュアルが国から出ることでしょう。そして介護保険法と障害者総合支援法との関連性がもっと整理され、こういう方々のためのグループホームも各地に増えていくと思います。

 「親あるうちに」このようなことにも関心を持ってみてはどうでしょう。障がいがあろうとなかろうと人生を充実させ、生きがいを持って楽しく有意義に過ごし、寿命を全うしながら「生まれてよかった!」「生んでくれてありがとう!」と言えるような人生を送ることができる社会を形作ることは私たちの責任であると思います。

 障がいがある方やそのご家族の相談を受けることが多い立場で、様々な情報を伝えると「知らなかった!」と答えられ、その後に悩みが解決していくケースが多くあります。やはり「知る」「学ぶ」ということはとても大事です。私もまだまだ知らないことがたくさんあります。ぜひ一緒に勉強していきませんか?

 みなさんが疑問に思うこと、なぜそうなっているのか知りたいと思うことなど、リクエストを頂ければ自分なりに調べ考えていきます!いろいろ教えてください!

以上