以前からこの場でもお話しさせて頂いていますが、文科省の生徒指導関係の資料にも発達に課題がある児童生徒と不登校や非行、いじめ、暴力行為などの因果関係が指摘されていて、昨今では既定の事実となりつつあります。
ただ学校における生徒指導上の様々な課題の背景に発達課題の可能性があることは理解できても「ではどう対応すればよいのか?」といった具体的な方法論が議論されることは少ないようです。実際に様々な課題に対応されている学校の先生方は試行錯誤を繰り返しながら日々、大変なお仕事をされていることを考えると頭が下がる思いです。
この「既定の事実」が「既定」として認識される20年以上前から私はその可能性を訴え続けてきました。当時、特別支援学校の特別支援教育コーディネーターという立場にあり、地域の小中学校から請われて特別支援教育に関する研修会講師を務める機会が多数あり、特に中学校の先生方向けには生徒指導上の課題の背景に発達障がいや知的障がい、あるいは心の病の可能性があることを伝え続けてきました。私にはそれが既定の事実であることを裏付ける体験があったからです。
以前にも少し触れましたが、私の学校教員としてのスタートは中学校でした。そこには様々な生徒たちがいて、笑顔で職員室まで遊びに来る者もいれば、荒れる子どもたちもいました。また当時から学校に通えない子どもたちも多数いて、先生業初心者マークの私は日々苦戦していました。しかし、荒れたり学校に通えなかったりする子どもたちも1対1で話しているととても純情で明るく、ともに大声で笑い合うなど本当にかわいらしい生徒ばかりでした。
「なぜだろう?」。それが率直な気持ちでした。子どもたちがそうなる背景があるに違いない。それはまだ1980年代の出来事であり、日本に発達障がいの概念や軽度知的障がいの考え方が定着する何年も前のことです。1度興奮したらなかなか収まらず歯止めが利かない、集団に参加できない、ルールが守れない、授業中じっとしておられず校内を徒党を組んで歩きまわる、地域でも様々な問題を引き起こす。笑顔でテレビ漫画の話を楽しそうに教えてくれるあの子が、なぜちょっとしたことで豹変してしまうのか?それが不思議でなりませんでした。
どこかにヒントがあるかもしれない。そう考えて様々な勉強会に参加しましたが、当時「特殊教育」と呼ばれていた今の特別支援教育について学んだ時、「おや?」と感じました。ふとしたことで荒れだすと止まらないある種の特性について学び、中学校の生徒たちと重なる点に気づいたからです。
当時の生徒たちに発達課題があったかどうかはわかりません。そうではなく、自分の指導力がなかったせいかもしれません。しかし、そこを起点とした私の探求心は留まるところを知らず、中学校の次に当時の「養護学校」(今の特別支援学校)に異動し、その後も勉強を続けました。そして様々な文献からも発達課題と生徒指導上の特性の因果関係は確かにあるだろうことを知りました。
自らの体験やその後の学びを通じて、学校や先生、家庭ではお子さんの発達課題にできるだけ早く注目し、可能なら専門的な教育的対応をすることによって生徒指導上の課題は発生せず、逆に本人の良いところを伸ばし、個性を輝かせることができる、と研修会等で伝え続けてきました。
また既に生徒指導上の課題を呈している子どもたちにも、いまから年齢相応の特別支援教育的対応をしていけば課題が改善することもある、と話し、具体的な指導・支援方法を伝えてきました。その結果、先生方のご努力により何名か救われた生徒が確実にいました。それでなくとも多忙化が叫ばれている学校現場で大変な思いをしている中学校の先生方が、改めて特別支援教育の基礎から生徒たちに個別の対応をしていくことは大変だったでしょうが、生徒の課題が改善したと感じた瞬間の感動は一生の思い出となり、教員としての勲章にもなったことでしょう。
しかし、中には先生方がいくら頑張っても頑張っても、具体的な成果が目に見えてこないケースももちろんありました。対象となる生徒に先生方が発達課題を感じてもご家庭が納得せず、あるいは納得してもらえないだろうことがわかっているので先生が自分で感じたことも伝えられない、そんなケースもあったと思います。
先日、ある地域で不登校のお子さんの相談をしている事業所のみなさんを前に「不登校と発達課題」をテーマに講演させて頂きました。参加者のみなさんは「学校の先生」というわけではないのですが、子どもたちの不登校という課題に正面から向かい合い、何とかしてお子さんやご家庭の笑顔が届けられるよう日々、頑張っていらっしゃる方々です。
自分の体験談を話し、不登校を含む生徒指導上の課題の背景に隠れているかもしれない様々な要因についてお話ししました。みなさんは頷きながら真剣にノートを取り、質疑応答では多数の質問をいただきましたが、ある方の切実な声が胸に響きました。「不登校のそのお子さんには確実に発達課題があり、勇気を振り絞って何度もご家庭に伝えているが全く反応がない。そればかりかお子さんの教育に全く関心がないようで、私たちは何をどうして良いかわからず、日々心を痛めている」。
さて、このような質問に私はどう答えたでしょう。それはまた次回に。
以上