「親なきあと」について続けます。この問題に対し海外ではどのようになっているのでしょう。先進諸国と呼ばれる欧米を中心に調べてみました。最近のアメリカを見ていると人権という点では首をかしげたくなることが多くなってしまっていますが、「親なきあと」という問題はそもそも存在しないようです。
アメリカでは社会的な自立を図る年齢になれば生まれ育った家庭を離れることが一般的のようです。障がいの有無にかかわらず親と離れて暮らし、障がいのある方にとってはその暮らしも様々な制度で守られています。そして使える福祉制度も充実し、カリフォルニア州では重度の障がいがあっても24時間ヘルパーを付けて一人暮らしをしている方もいるようです。その方一人の支援のために支払われる福祉サービスの費用は日本円にして年間500万程度になる、とする資料もあります。
また日本と同様に少子化といった課題を抱える先進諸国は少なくないのですが、多くの国では移民の就職先として福祉職は人気があり、日本と同じく平均的な給与よりは福祉職は低いようですが、それでも働きやすい職場として移民が多く就労し、福祉職の人手不足を支えているようです。
文化も風土も国民性も、そして税制も異なる諸外国ですが、少なくとも先進諸国と呼ばれる国々では障がいがあっても「親なきあと」も安心、といったところが多いようです。さらに言えば障がい者雇用の形も様々で、知的障がいが重くてもスーパーで買ったものをレジ袋に詰める仕事、企業の玄関で笑顔を振りまくドアボーイのような仕事、勤務時間中はずっとジョブコーチがそばにいてできることをできる範囲で行う仕事など障がいの軽重に関わらず「就労して働く」ことが当たり前になっている国もありました。
常に身体を動かして働いていれば健康維持にも効果がありますし、企業ですから健康診断も義務化され、常に信頼できる方とペアになって動くので体調の異変なども見抜きやすく、災害時にもペアで避難するので安心です。「親なきあと」などという用語が存在しないことにも頷けます。そして何よりも障がい者の権利が社会全体で十分に守られています。日本と単純に比較するにはあまりにも違いすぎますね。
海外の例は参考にならないのかもしれませんが、それでもこの国で今できることを考えていく必要があります。国や自治体に新しい法や制度の要求行動を行うことはとても重要ですが、それと同時にいま目前にある問題を現状の上に解決する方向性を持たなくてはなりません。
ある資料を読んでいたところ「親なきあと」ではなく「親あるうちに!」を合言葉にこの問題を考えて行こうと提唱する方がいて深く共感しました。「親なきあと」に子どもがどう暮らし、どう生きているのかを親が我が目で確認することは困難です。だとしたら「親あるうちに」後悔しないようあらゆる点であらゆる準備を進めていくことが大切なのではないでしょうか。
住む場所の問題、お金の問題。そして最も重要な点である「人」の問題をどう解決していくか。実は私にはこれらの問題を現状の制度の中で一元的に解決できるかもしれないあるアイディア、プランがあります。しかし、このプランを実現するにはまだ前提条件が足りていません。いましばらく調査、研究を続け、可能なら様々なみなさん、特に企業関係者の方々と共に勉強させていただきたいと考えています。
私が直面している相談事例の中でも複雑化する問題が多くなってきています。親が80歳を超え子が50代であり(いわゆる「8050問題」)、若い頃から引きこもり状態でありカード払いでなんでも購入してしまい、支払いは親が肩代わりしている、どうしたらよいか、といったような。あるいはご家族のすべてに何らかの障がいがあり、比較的軽度である家族の1人が他のケアをすべて担っていて限界が近づいているなど。
「親なきあと」だけではなく救いを求めているご家族がたくさんあります。そして多様化する新手の諸問題に対し法や制度は時代遅れなままで、悩まれている方を救うことができないままの場合もあります。何をどうすれば良いのでしょう。自身の勉強もまだまだ不足していると自覚しています。そして思い切った発想の転換をしていかないといけないかもしれません。
例えばインクルーシブ教育という言葉があります。障がいのある子もない子も共に学ぶ、ということですよね。この言葉を聞き、みなさんはおそらく「小中学校の通常の学級に障がいのある子どもが通う」ことを想像されたのではなりませんか。しかしあるサイトを読んでいて驚きました!
ある国では「障がいがある子の学校に障がいのない子が通う」インクルーシブ教育が実践されているそうです。日本でいえば特別支援学校に近隣の障がいのない子どもたちが通う、ということになります。日本の特別支援学校はやや不便な場所にあることが多く、もし通えることになれば周辺住民のお子さんにはメリットがあるでしょう。通学区間の安全確保が課題にっている現代ですから、家の近所の学校なら安心です。
私が「あかとんぼ」という放課後等デイサービスの前身となる事業を始めた頃「障がいのあるお子さんと触れあう機会を作りたい」としてある夏休みに地域の障がいのないお子さんをお預かりしたことがありました。親御さんはこの交流を大変に喜び、そして我が子の変化に驚きました。人権意識が高まったことに。
大胆な発想で問題を解決していく。「あかとんぼ」を作り障がいがあるお子さんのご家族の課題が一度に数多く解決しました。いま、あの頃を思い出しています。「親あるうちに」できることは必ずある、と。
以上