「カッコいい福祉!」。以前のブログでもお伝えしましたが、あるJリーガーの福祉活動を支援しています。彼は知的障がい者のサッカーを普及させ、サッカー好きの方が福祉職を目指すようになるきっかけを作ろうとしています。実はJリーグに所属するチームの中には下部に知的障害者のサッカークラブチームを有しているところがあります。中でも横浜F・マリノスの取り組みは歴史が古く、地域に根差した活動しています。同チームのウエブサイトには下記のような説明があります。

「横浜F・マリノスフトゥーロはJリーグ初の知的障がい者サッカーチームとして2004年に発足、横浜ラポール・横浜市スポーツ協会と協力して運営しております。フトゥーロはスペイン語で『未来』を意味し、サッカーを誰もが身近に楽しめる環境の整備、障がいの有無を越えていけるよう活動を行っています。」(横浜F・マリノスウエブサイトhttps://www.f-marinos.com/club/hometown/rapport/futuro

 ウエブページにはフトゥーロの選手たちがマリノスの選手と同じユニフォームに身を包み、誇らしく腕を組む写真が掲載されています。これも知らない方が多いかもしれませんが、サッカーにはほかにも四肢に障がいがある方のサッカーや車いすユーザーのサッカー、電動車いすユーザーのサッカー、視覚障がい者のサッカー、心の病の方のサッカーなどカテゴリーが数多くあり、どのような状況にあろうとサッカーが好きな方の夢を裏切らないような仕組みがあります。しかし、メディアで紹介される機会は実に少なく、その存在を知らなかった方も多いだろうと思います。

残念ながら福祉職を希望する方は減り続けています。高齢者や障がい者、児童などの枠に関わらず、福祉の仕事は「きつい」「きたない」「きけん」の「3K」の仕事として敬遠されがちです。最近はここに「くらい」「きびしい」などKが増え、6Kだとか8Kという人もいます。そこで私たちは障がい者福祉に「スポーツ」という付加価値を付け、スポーツ好きな方が福祉を通して障がいの有無にかかわらず同じ夢を追う、そんな「カッコいい福祉」の新しい形を目指しています。

 これもあまり知られていないと思いますが、知的障がい者サッカーにもワールドカップがあります。国際サッカー連盟が主催する4年ごとのワールドカップと同じ開催地に各国の代表が集い熱闘が続きます(次回は2026年、アメリカ・カナダ・メキシコなど北米大陸で開催されます)。日本でも知的障がいがあるサッカー好きな人々が集まり、まずは日本代表を目指し、そして世界一を目指し夢を追いかけています。

そんな彼らを仕事として、また夢を追うチームを支える一員として人々に福祉職に関心を持ってもらいたい。私たちはそう願っています。もし横浜F・マリノスのようにJリーグの多数のチームが下部に知的障がい者のクラブチームを作れば、リーグ戦を通じて優勝を目指す新しい夢を追うこともできるでしょう。小さいころからサッカーが大好きで、将来はJリーガーになりたい!、と夢を持っていた人々が福祉を通じて、新たな形でサッカーに関わり、ともに夢を追えるのではないでしょうか。

 サッカーだけではなく、福祉には様々な可能性があり、様々なカテゴリーの人々が入職することができる可能性を秘めています。中高生のみなさん、大学生のみなさん、就職氷河期世代のみなさん、セカンドキャリアを目指すみなさんほか、福祉を通じてともに夢を追い、自身の人生をより有意義なものにしていきませんか?

 教員をしていた頃の教え子に不登校傾向の高校生がいました。自分に自信が持てず、中学までは引きこもることが多く、私が勤務していた学校に入学しても来たり来なかったりすることが続きました。縁あって彼が高校3年に進級した際に担任となり、人生についてよく話し合いました。

 当時、このブログで何度も紹介してきた放課後等デイサービスの原点「あかとんぼ」の運営にも関わっていたので、夏休み、彼に「あかとんぼ」でボランティアをしないか、と誘いかけてみました。親しい私が一緒に行くのなら安心だ、ということで「あかとんぼ」がプールのある広い公園に遊び行く夏の暑い日、彼は自閉症がある小学校低学年の男の子をマンツーマンでサポートする担当となりました。

 多動傾向のあるお子さんを運動不足の彼はヒーハー言いながら追いかけ、一緒にプールに入り、お弁当を食べ、トイレへ連れて行ったり着替えを手伝ったりしながら汗だくで働いていました。「あかとんぼ」に帰る時間が迫り、彼はお子さんを他のスタッフに預け、ようやく自分のトイレを済ませることができ、お子さんの元へ戻ってきました。その時、自閉症のお子さんは目に涙を一杯にためながらずっとキョロキョロしていました。そして高校生が戻ってくる姿を見つけるなり、つないでいたスタッフの手を振り切り、一目散に走りだし、高校生に思いきり抱き着きながらワーンと大きな泣き声を上げました。

 今日1日、とても楽しく遊び仲良くなった高校生のお兄さんが突然いなくなり、ビックリしたり心配したり悲しくなったり。そこに戻ってきたお兄さんを見つけ安心の大泣きだったのでしょう。高校生は最初、なぜ子どもが泣いているのかわからず、驚いたり困ったりしていましたが、周りのスタッフに理由を教えてもらい泣き出しました。そして子どもをしっかり抱きしめたのです。

 その日以来、たびたび彼はボランティアに来るようになり、卒業時には迷わず福祉の道を選びました。生まれて初めて誰かから必要された時間を経て、自分が誰かを支えることができる存在であることを知り、社会における自らの存在価値や生まれてきた意味を知ることができたのだと思います。時に福祉の仕事場はこのような感動の瞬間を生み出すことがあります。

 福祉や介護の仕事だけでなく、医療、看護、教育、その他対人援助職といわれる様々な仕事が昨今、敬遠され気味です。しかし、ただ働くだけでなく夢、ロマン、感動を追い、他者のために働くだけでなく自らも輝かせることができる、対人援助職とはそういう仕事なのだろうと思います。ぜひ一緒に夢を追いませんか?私たちはみなさんを待っています!

以上