1998年に立ち上げた当時の障がい児放課後クラブ(今の放課後等デイサービス)「あかとんぼ」。当時の勤務先だった養護学校(現:特別支援学校)には夏から秋にかけあかとんぼ(アキアカネ)が元気いっぱいに飛び回る様子が良く見られ、子どもたちもいつか社会に元気よく飛び立ってほしい、との願いを込めて「あかとんぼ」と命名しました。
それから27年が過ぎ、当時の子どもたちもいまは30代から40代に。「あかとんぼ」を巣立った彼らは、同じく保護者と設立した小規模福祉作業所「とんぼ舎」(今は生活介護事業所、就労継続支援B型事業所)や他の通所施設に進み、今も元気にしているようです。
しかしその両親は60~70代となり、中には亡くなった方もいらっしゃいます。障がいがあるお子さんのいる親の会と話す機会がありますが、最後には必ず「親亡き後」の話題が出ます。それに関する講演依頼を受けることもあり、ご家族の間では最大の関心ごととなるでしょう。当時の「あかとんぼ」に通っていたお子さんのご両親も、いまはグループホームの開設などに尽力し、子どもたちがどのような境遇になろうと人生を楽しく豊かに過ごせる準備を進めているようです。
昨今、高齢者の健康寿命、またアクティブシニアといった言葉をよく聞きますが、自身ができるだけ健康である時間を長くし、障がいのある我が子を可能な限り見守り続けたいとする親心は十分に理解できます。しかし、健康にも限りがあり、やがて親自身が介護を受けたり施設に入ったりするときが来るでしょう。そんな親元にも障がいのあるわが子が気軽に会いに行ける新しい福祉の形が必要とされています。
地域の放課後デイから地域で就労し、親元を離れても地域に住み続け、気軽に家族が様子を見に行ける、会いに行ける環境を作り、親が介護を必要とされたときには逆に子どもたちが気軽に会いに行ける、そんな高齢者福祉と障がい者福祉の融合を具体的な形にしなければなりません。例えば高齢者と障がい者のグループホームが隣接したり、あるいは同じ建物の中に設置されたりすれば、親の介護が必要になっても可能な限りお互いの状況を知ることができるでしょう。言葉を交わしながら笑顔で触れ合うことができるでしょう。
あるいは介護人材が不足している中、高齢者施設内の生活支援に関する仕事を企業体が障がい者雇用で賄い、親が入居する介護施設で子が働く、といった構図も想像できます。いずれにせよ社会のニーズに即した新しい形の福祉のあるべき姿を考え、具体的な形として世間に示していかなければなりません。
放課後デイを運営していく立場から子どもたちのその後の人生をどう支えていくかの見通しを長く持てる事業所が必要です。そしてそれは事業所や行政が考えればよい、ということではなく、ご家族も一緒に考え、共に支えていくチームワークが望まれます。放課後デイはあくまでも療育機関であり、ただそこに通い、おやつを食べ、遊び、帰宅するだけの場ではありません。子どもの能力を最大限に延ばし、一人一人に応じた療育で人生を豊かに過ごしていける基礎、土台を作っていく、それが放課後デイです。
学校や家庭ではできない経験を通じ、習い事とはまた別の視点で様々な能力を開発し、伸ばしていく。社会性やコミュニケーション力を高め、人生を豊かにできるような趣味を見つけ、社会に出た後の余暇支援にもつながるような総合的な療育が重要です。そしてそれは事業所任せにするのでなく、ご家族も関わっていただく中で、ご家族の悩みにも寄り添いサポートしていける放課後デイが理想です。
放課後デイを「卒業」した子どもたちが放課後デイで培った様々な能力を活かし、自分なりに社会参加しながら人生を有意義に過ごしていけるところまで、事業者は責任を持たなければなりません。そして新しい福祉の形を事業者が提案し、具体化し、社会を変えていく地域のトップランナーになるべきと考えます。それはご家族の未来の話にもつながり、子どもたちやご家族が大きな夢を持てる人生設計を共に考えていけるような福祉を模索していく。それがレジリエンスラボの使命だと心得ています。
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