2026年10月1日からすべての事業者に義務化されるカスタマーハラスメント、略してカスハラ対策ですが、果たしてどのような方が当事者になってしまうのでしょう?そこを理解していくと、ひょっとしたらトラブルを未然に防止すると共に、トラブルが発生してしまったとしてもことが大きくなる前に収束させることができるかもしれません。
レジリエンスLABOは主に保育園・幼稚園・学校や福祉施設の当事者対応を含めたカスハラ対策をサポートしています。請われて研修会を行うことも多いのですが、教育や福祉の現場でカスハラの当事者になってしまうのは保護者であるケースが多いですね。昔からモンスターペアレントだとかクレーマーなどという言葉がありましたが、その延長線上にあるのかもしれません。
研修会でまずお伝えするのは、期せずしてカスハラの当事者になってしまう保護者の多くが何らかの苦しさ、困り感、生きづらさを抱えているかももしれない、という点です。何の苦労もなく日々満ち足りて暮らされていると言える方がこの国に果たしてどのくらいいるのかはわかりませんが、そのような方が従業員を怒鳴りつけたり土下座させたりするようなことはまずないのではないでしょうか。
ついつい先生に対して言葉が荒くなってしまう方々は、ひょっとしたらどこかでSOSを出しているのかもしれません。そのSOSに気づき、話を聞いてみたり手を差し伸べてあげたりすることによって、クレーマーが逆にパートナーになり、お子さんに関する課題解決に向けて連携できるようになれば素晴らしいですよね。
先生へのハラスメントの背景には、子どもに関する情報を共有し話し合える保護者同士の付き合いの場が少なくなっているという事情があると思います。また夫や妻というパートナーと子育てでなかなか協力できないご家庭もあるかもしれません。園や学校等の先生は我が子を知っている数少ない第三者です。そんな先生方に話を聞いてもらいたい保護者は多いでしょう。
そんなとき、先生方が保護者の心理を理解していれば不要な発言を控え、時間を決めてゆっくり話を聞く機会を作り、傾聴に徹することによって保護者の不安を軽減させることができるかもしれません。しかし昨今の園や学校、福祉施設は人手不足もあり、保護者の話を個別にゆっくり聞く、という時間がなかなか持てないのも事実です。若い先生や職員が多くなり、誰かの相談に乗った経験が少ない方も多いでしょう。ではどうすれば良いのか?
最近、ある企業団体の集まりに参加したのですが、レジLABOがカスハラ対策のサポートをしていると聞いた複数の事業者、管理者の方から「対策はどうすればいいのですか?」と問い合わせをいただきました。企業のカスハラ対策を謳っている行政書士、司法書士、弁護士事務所などはネット上に多数広告が出ていて、レジLABOとしては当面は教育や福祉関係のみを対象にすればよいと考えHPにもそう明記したのですが、企業関係の方がこれほど困られているのは意外でした。
よく考えれば民間企業、事業者の皆様の方がカスハラにおけるトラブルはより深刻な場合があるのかもしれません。なぜなら園や学校、施設等で働く先生や職員の方などはその身分が教育や福祉関連の法律でしっかり守られているからです。公立学校等であればカスハラの発生が公務執行妨害につながってしまうこともあります。カスハラ対策の義務化でガードはより強固になるはずです。
しかし営利を目的として事業を行っている企業は、顧客であるカスタマーとのトラブルは即経営に響いてくる可能性があります。例えば大口のお客様や仕事上の取引先などとちょっとしたことでトラブルになり、そのまま取り引きが止まってしまうようなことがあれば損失が発生していまいます。同時に事業者はハラスメントを受けている従業員を守る義務も出てきます。板挟みですね…。
企業などにハラスメントまがいのクレームを入れてくる方々も、ひょっとしたらご家族や自分のことなどプライベートでの悩み、辛さ、困り感を抱えている可能性があるのではないでしょうか。全部が全部、そうではないかもしれませんが、だとしたら心の悩みにアプローチできる専門的な知見や経験を持つ者がプライベートな悩みにアプローチできれば、ひょっとしたら本丸のカスハラが収束していくかもしれません。
企業としてはできうる限り事を荒立てず鎮静化させ、その後も大事なお得意様、取り引き先としてお付き合いをさせていただきたい、と考えるでしょう。園や学校、施設も同様です。できればことを荒立てず、法的な手段などを用いずに解決に導くことが理想とされます。国のカスハラ対策でも弁護士などを立てるのは最後の手段であることが示されています。
私は学校教員時代からいままで、何百人という方から相談を受け、すべてではありませんがその多くを解決に導いてきました。AIでは対応できない「対面による当事者との話し合い」などにいまこそのこの経験が生かされる、と感じています。むしろ当事者と事業者が直接やり取りするよりも話はスムーズに進むように思います。
法律は大事ですが、それを盾にするのではなく、まずは当事者の話をよく聞き、整理し、仲介していく。そのような外部の専門家が求められていると思います。クレーマーをパートナーにする。トラブルをきっかけにしてよりよい関係を作っていく。事業者が若い従業員を守りながら離職者を減らし、そのうえで顧客とは良好な関係を維持していく。そんなカスハラ対策を今後も心がけていきたいと思います。
園や学校、福祉施設に限らず民間企業や行政機関からのお問い合わせも受け付けます。臨床発達心理士であり相談支援員の任用資格もある専門家がお悩みをお聞きします。いつでもお気軽にご連絡ください。