不登校対応の続きになります。文部科学省による調査において、不登校の背景要因(きっかけ)に関する結果が示されています。たとえば「いじめ」「無気力・不安」「親子関係」などから回答者が選択する形になっていますが、この中に「教員との関係」という選択肢があります。
この選択肢で注目したいのは調査対象となった教職員自身が「教員との関係」を様々な不登校のきっかけと回答したのは例年1~2%なのですが、不登校になっている児童生徒自身が「教員との関係」を不登校のきっかけであると回答したのは30%前後となっていて、その意識には大きなギャップがある点です。そこで特別支援教育という視点で最近の先生方に振り返っていただきたいことがあります。
先日、障がいがあるお子さんが通う福祉事業所のみなさん十数名と懇談する機会がありました。その際、保護者から学校に関する相談を数多く受けるがどう対応したらよいか、との質問があり、その内容について驚きました。あくまでも福祉事業者の方からの情報なので事の大小はわからないのですが、お子さんが通う小中学校特別支援学級・通常学級の教員から保護者面談の際に「障がいが重いから特別支援学校に転校したらどうですか?」「病院に診てもらったらいかがですか?」「薬を飲ませた方が静かになるのではないですか?」などと言われショックを受けた、どうすればいいか、という内容がとても多いのだそうです。
私の認識ではこれらの教員の言葉は権利侵害に該当する可能性が出てきます。発達障がいや知的障がいの影響から何らかの行動上の特性があるお子さんの保護者にかけられることが多い言葉のようですが、場合によっては「お子さんが大変なので見切れない」という意味にも捉えられてしまいます。何よりも保護者にとっては衝撃でしょう。
昔は障がいがあるお子さんは「養護学校」(現・特別支援学校)や「特殊学級」(現・特別支援学級)に入学するのが当たり前の時代もあり、通常学級にどうしても通いたいとする保護者が市民運動を展開してようやく希望が実現するというようなこともありました。市町村教育委員会に設置される「就学指導委員会」という組織が就学児健診時に「障がいがある」とリストアップされたお子さんたちの入学先をどこにするか検討し決めていました。
しかし今は法律が変わり「就学指導委員会」は多くの自治体で「教育支援委員会」のような名称に変わり、就学先を決めるための判断の中で本人や保護者の希望を尊重する方針が示されています。教育支援委員会が「特別支援学級が適している」という判断を出したうえで子どもたちはそこに入学するのですが、その判断に関わらず担任した教員が「手に負えないから何とかしてほしい」と保護者に訴えるケースが最近もまだあるようです。
昨今の教員不足においては特別支援学級の増加が一つの要因であるとされています。同学級の設置が全国的に進み、ここ数年で10年前の1.5倍にも増えているのですが、対応できる教員を見つけることが難しく、特別支援学級は初めてという教員を担任にしたり非正規の講師という立場の教員を担任したりせざるを得ないようです。
特別支援教育の専門性を見る一つの手立てとして特別支援学校教員免許の有無を確認する方法がありますが(必ずしもそれがあるからと言って専門性が高いとは言い切れないのですが…)、その免許所有率も特別支援学級担任はさほど高くない(3~4割)ようです。ただし免許がないからと言って専門性ややる気が低い教員ということも言えません。そもそもこの免許を取得できる大学や機会が少なく、免許を持っている教員自体が低いということも言えるでしょう
またこのような権利侵害的な言葉を吐く教員がいる学校全体がそう考えているわけでもなく、むしろ校長先生、副校長先生、教頭先生などはきちんと理解しているものの、経験の少ない、あるいは初めて特別支援学級を担任する教員が言葉の使い方を誤り、保護者に不快感を与えてしまうのかもしれません。
もしこのブログを学校の先生方に読んでいただいているようでしたらぜひ覚えておいでいただきたいのですが、私が学生に口を酸っぱくして伝えている特別支援教育に関わる教員としての行動理念は、当たり前のことですが「障がいのない子にできないことは障がいのある子にもやらない」です。
例えば障がいがあるお子さんの前で他の先生方と「この子の障がいは…」と話してしまう教員に時々出会います。先日もある特別支援学校の授業を参観していた際、目の前で一生懸命授業を受けているお子さんに対し、同じく参観していた教員が「やっぱり自閉症は集中力がないね」との声が聞こえてきました。
もし通常の学級に通っているお子さんが何らかの病気と向き合いながら頑張っている教室で教員が本人に聞こえるように「この子の病気はね…」と話し出したら大変なことになりますよね。個人情報の漏洩にも当たります。しかし、障がいがあるお子さんの前では本人が理解しづらいだろうと考え、言ってはいけないことややってはいけないこと(障がい特性である言動や行動をマネするなど)を平気で披露する教員がいます。それは立派な権利侵害です。
同じ視点からすれば通常の学級に通う障がいのないお子さんの保護者に対し、仮にお子さんに問題行動が多いからと言って「学校を移ったらどうですか?」「薬を飲ませたらどうですか?」とは言わないでしょう。もし言ったとすれば大きな問題になると思います。だとしたら障がいがあるお子さんの保護者に「薬を飲ませたら?」「学校を替わったら?」というセリフは立派な権利侵害に当たります。
特別支援教育に関わる先生方、自らの身を守るためにも言動、行動にはくれぐれも配慮をお願いします。
以上