こんにちは。前回は保育園、幼稚園、小学校の先生であるみなさんに保護者からの相談が来た時の対応法についてお伝えしました。今回は保護者のみなさんに早期のご相談にどのようなメリットがあるかをお伝えしたいと思います。

 まだ小さな我が子が、他のお子さんと共に過ごす保育園や幼稚園の様子を見ていると「少し違っているところがあるのかな?」と心配になりご相談に見える方がいます。あるいは保育園や幼稚園では特に課題もなく過ごせ、先生に聞いても「変わったことはないですよ」と言われるのに、自宅に戻るとかんしゃくを起し物を投げたりお母さんをたたいたりしてしまうお子さんもいます。悩みは様々ですが、そのような場面を見て「子どもがこうする理由が何かあるのでは?」と問題意識を持てる方は素晴らしいと思います。

 たいていの場合、お子さんがまだ小さいと大きな声で怒れば一時は静かになりますし、力関係で言っても大人の方に圧倒的に分があるので「これは子どものわがまま」と決めつけ、何らかの方法でことを止めることができるかもしれません。しかし、お子さんが同じような場面で何度も同じような課題を示し、それが社会的には受け入れられない方法であるのなら、背景に何か理由があるのではないかと考えた方が良いかもしれません。

 保育園や幼稚園ですぐに子どもたちの集団から外れ一人遊びに興じてしまう、ほかの子どもたちが一緒に遊んでいるのに自分の世界に入り黙々と遊んでいる、言葉よりも先に手が出てしまう、理由もなく突然大声を出したり泣きだしたりする、園ではいい子だが自宅に帰ると保護者や自分より小さなきょうだいに手を出してしまうなど。こういうお子さんはどこにでもいるのかもしれませんが、何度教えても修正が利かず、成長とともにエスカレートするような場合には専門家に相談された方が良いでしょう。

 ただ小さなお子さんはみんな多動であったり衝動的であったり、自らの気持ちを言葉にしづらかったりします。少しのことを大げさに心配する必要がない場合ももちろんあります。いずれにせよ悶々と悩むよりも心配なことがあれば専門家に相談した方が早く原因がわかったり、あるいは何も心配する必要がなかったりするので、いち早く園の先生に相談し、地域の専門機関、相談機関を紹介してもらうとよいでしょう。

 私は相談の仕事に携わって20年以上になりますが、就学前からかかわりを持ったお子さんたちの多くが立派に成長し、自らの夢の実現に向けて前進しています。もちろんそこに至るまでは保護者の方々の尊い努力、本人の頑張りがあってこそなのですが、お子さんが小さいうちに私の話を真剣に聞き、受け入れ、様々な課題の解決に向け共に協力した経緯があってこその今の成長だと感じています。

 私がお受けする相談の100%が解決することはありません。中には一緒に話し合ったり考え合ったりしても解決しないことがあります。ただお子さんが小さなうちのご相談で、しかも保護者の方々が私のアドバイスを真摯に受け入れ、それに従い行動していただくと解決率はとても高くなります。逆に否定されたりアドバイスを聞き入れていただけなかったりするとよい結果につながりません。相談される保護者とその相談を受ける者がワンチームになり、同じベクトル(方向性)を持ちながら歩むと望ましい結果につながることが多くありました。

 あるお母さんは就学前のお子さんが園で集団行動ができず、先生から「ご家庭でしっかりしつけてください」と言われ途方に暮れていました。お話を聞き、お子さんの様子を見て「耳からの情報入力」が苦手であり抽象的な指示が理解しづらい傾向があると予測し、目で見てわかるコミュニケーション方法、そして具体的な指示で本人に伝えるようお母さんにお話ししました。その方法が本人に見事にマッチし、大きな課題は消失しました。小学校へ入学してからも小さな課題は随所に見られたのですが、そのたびにお母さんと話し合い、解決策を見つけ、一つずつ消去していきました。いまは学校からも優等生と折り紙を付けられ、本人は将来の具体的な夢を持ち青春を謳歌しています。

 お子さんがまだ小さいうちに課題を見つけることは困難でしょうし「これはいまだけでいつか解決する」と考えてしまうのも無理のない話です。そして世間では「~障がい」といった言葉が氾濫し、自分の子どもがそんなカテゴリーに分類されてしまうのか、と考えるとやりきれない気持ちになりますよね。

 でも「~障がい」かどうかよりも、お子さん自身が何かに困っている、そして保護者のみなさんがそんな我が子を見て辛い気持ちになっているのだとしたら、まずは解決方法を考えていくことはとても重要です。そしてそれは多くの場合、専門家でなければわからないような課題であることが多いと思います。

 保護者のみなさん、お子さんについて何か気になることがあればお気軽に身近な相談機関にお話しください。そしてお子さんの未来について一緒に考えていきましょう!

以上