先日、久ぶりに50年近くファンを続けているプロ野球チームの試合をZOZOマリンスタジアムで観戦しました。日頃からあまりストレスの溜まらない体質だと自覚しているのですが、スタジアムの雰囲気に酔いしれ、身振り手振りの入った大声で応援してしまい、近くの皆さんにはご迷惑をおかけしてしまったかもしれません…。チームも勝利し、気分もすっきり。やっぱりストレスがあったのかもしれませんね…。

 特別支援学校の教員をしていた頃もよく野球観戦でマリンスタジアムに足を運んでいたのですが、ある日、数年前に高等部を卒業した男性にスタジアムでばったり会いました。生徒だったころは校内で私を見つけるといつも笑顔で走り寄り、好きな野球の話を教えてくれました。ただ、彼は少し体に動かしづらい部分があり、また言葉にも不明瞭な面があったので、友だちは多くなく、教員以外とはあまり上手にコミュニケーションが取れずにいました。

 そんな彼は卒業して一般企業に障害者雇用されました。おそらく元気に働いてくれるだろうと祈る思いで送り出しましたが、徐々に記憶は薄れていきました。それから数年後、マリンスタジアムで遠くにいた私を見つけ、生徒だったころの柔和な笑顔のままで「先生!」と叫んで走り寄ってきました。

 「いつも見に来るのかい?」と聞くと「よく来ます!」とのこと。どうやらいつもスタジアムのライトスタンドでホームチームのユニフォームを着て周囲の人と一緒に飛び跳ね、大声で歌うのが大好きなようでした。そして試合前の応援が始まるというので、再会の感動もそこそこにスタンドに走って行きました。

 試合後、彼がまたやってきてしみじみと話し出しました。仕事には精一杯向き合っているが失敗することもありいつも緊張している、周囲には同じ立場の従業員はおらず友人ができない、職場の人は良くしてくれているが毎日仕事が終わると心も体も疲れてへとへとになる、そんな内容でした。

 しかしそんな彼はマリンスタジアムのホームチームのファンクラブに入り、休日に試合があると必ず観戦にやってきて大声を出し、思い切り身体を動かし、チームが得点すると周囲の人々とハイタッチし、勝利するとハグし合う、そんな応援を通じてめちゃめちゃストレス発散できていると笑顔で教えてくれました。職場には同じチームのファンがいて、野球の話だと従業員の輪に入って楽しく会話することもできるそうです。

 このチームのライトスタンドの応援は有名ですが、チームの勝利という目的の下では障害のあるなしは関係なく、また言葉が苦手な彼が会話でコミュニケーションする必要もないので、安心して思い切り声を出し身体を動かせるのでしょう。彼にとってはまたとないストレス開放の機会であって、私は実はこのチームのライバルチームのファンなのですが、彼を温かく迎え入れてくれているマリンスタジアムのホームチームに心の中で感謝することしきりでした。

 話は変わりますが、先日、千葉県内のある路線の鉄道を利用していたところ、扉の上方にあるモニターに新しいゲームソフトの広告が流れていました。そしてびっくりしました!それは人気のゲーム機に対応するスポーツ系のソフトだったのですが、車いすバスケットボールのソフトでした!ゲームに詳しい方は「そんなこと知ってるよ!」と笑うかもしれませんが、めったにゲームなどしない私にとっては驚きでした!

 プロ野球の応援が特別支援学校卒業生の生きがいとなり、特別支援学校の野球部が夏の甲子園の地方予選に参加する時代となり、そしてテレビゲームにも障がい者スポーツが扱われるようになりました。障がいがある方とスポーツの垣根がどんどん低くなっているように思います。そして中でもサッカーには様々な障がいを抱えた方が参加できるようなたくさんの種目があります。

知的障がい者サッカー

精神障がい者サッカー

脳性まひ者サッカー(CPサッカー)

視覚障がい者サッカー(ブラインドサッカー)

聴覚障がい者サッカー(デフサッカー)

切断障がいがある方のサッカー(アンプティサッカー)

電動車いすサッカー

 各々のルールや歴史、背景などには今回は触れませんが、どの競技も共通して相手チームのゴールにボールを入れれば得点になる、という基本的なサッカーのルールを踏襲しています。私自身も大学で教鞭をとるようになってからこれらの協議があることを知ったのですが、おそらく世間にはまだまだ知られていないものも多いのでしょう。

 数年前、招かれて学生を連れアンプティサッカーの大会にボランティアに参加した際、選手のみなさんの高度なプレーに圧倒されました!義手や義足を付け、杖を活用しながら競技するのですが、正確なパス回しに鋭いシュート、選手同士のぶつかり合いには迫力がありました。引率した学生も初めて目にする光景に驚き、感動していました。

 このブログで何度か触れてきていますが、ある縁でJリーガーが進める知的障がい者サッカーの普及に協力しています。あるチームの監督は大学の教え子で現役の特別支援学校教員ですが、定期的に使える練習場がないと相談され、大学の上層部に掛け合い、大学グランドが空いているときには使えるという配慮を頂き、選手も練習により一層力を入れることができているようです。

 これも初めて知る方が多いかもしれませんが、Jリーグのチームの中にはその傘下に知的障がい者サッカーのクラブチームを有しているところがいくつかあります。次回はその活動紹介をしましょう。

以上