複数の市町村で相談員をしていますが、ギフテッドの定義に当てはまるかどうかは何とも言えないものの、発達に課題はあるけれど学力が極めて高い、あるいは物言いや振る舞いから精神的な発達が早いのではないか、と思われる子どもたちに出会うことがたびたびあります。

 もちろん保護者の方がお子さんの現状に不安を持ち「相談」にいらっしゃるくらいですから、それなりに保育園や幼稚園、学校、家庭での困り感をお持ちなのですが、なぜか私の前に来るとみんなニコニコと笑顔で、自らいろいろな話を教えてくれたりとてもフレンドリーに近寄ってきてくれたりします。相談室には私のほかに関係者が1,2名いることもあるのですが、初対面の関係者とも楽しく遊びまわる様子も見られます。

 保護者同伴のうえで少人数で静かな環境が彼らに安心感を与えるのでしょう。そういう姿を見ていると、この子どもたちのどこに課題があるのだろう、と不思議になるのですが、聞いてみると園や学校には行き渋りがあり、友だち関係も微妙で、先生方からは園や学校でのネガティブな様子が多々報告されてくるようです。

 また家庭内でも保護者を悩ませるような行動があり、自分の育て方が悪いのか、と自らを責めるお母さんもいました。私はそんなみなさんに対し、ケースに応じて必要な具体的アドバイスを行い、その後にどのような変化があったかを報告して頂いたうえでさらにアドバイスを続けます。

 確実に言えるのは保護者のみなさんがこれらのアドバイスに真摯に向き合い、できるところから少しずつチャレンジしていくと、必ずお子さんの状況が改善していく、ということです。お子さんの年齢が小さいうちにこれらの対応を始めるとその効果はさらに高まるようです。

就学前からかかわってきたお子さんが小学生、中学生、高校生と成長していくに従ってその能力を伸ばしていく姿に接するのは無上の喜びですが、保護者のみなさんにとってはそれ以上に子どもたちの未来が見え「生まれてきてくれてありがとう!」と心から言える瞬間に出会えるようです。

 今後、このような子どもたちに対し文部科学省も様々な対策を具体化していくようです。いまは「個別最適な学び」と呼んでいますが、子どもたち一人一人の得意、不得意を活かしながら、それに応じた教育方法を考えていく時代となっています。そうなってくると私からすれば今後は「すべての子どもへの特別支援教育」になってもらえるとよいのだろう、と考えます。

 年齢に比して学力は高いが発達上の課題がある、逆に学力は高くないが発達上の課題がない、学力も社会性も年齢相応、いろいろなお子さんがいます。学校はそういうお子さんが混然一体とまじりあい、大人になってからの社会生活、人間関係の基礎を作る場所です。

相互に支え合い、補い合い、助け合う学級経営が行われ、そのうえで先生が一人一人に向き合い「個別最適な学び」を考えてもらえれば、と思うのですが、願わくば小中学校や高校の1クラスの人数がいまよりももっともっと少なくなってほしい。私は1クラス10~20名が理想と考えています。そうなれば今よりもっとインクルーシブも進み、ギフテッドの子どもたちも生きやすくなり、先生が一人一人の子どもと向き合う時間もぐっと増えるでしょう。

 ただ文科省のギフテッド対策についてはある懸念も持っています。発達に課題はあるが能力の高い子どもたちを大事にしていこう、とする方針には賛成です。ただ発達に課題があるお子さんのすべてに何らかの高い能力があるかどうかはわからず、能力が高くとも周囲にはそれがわからないようなお子さんもいます。

以前にも少しお話ししましたが、かつて特別支援学校で担任した中学生は、小学生のころまでは校内をはだしで走り回ったり先生に掴みかかったりするなどの行動上の特性があったため、周囲からはコミュニケーションが取れない子どもと思われていました。私はこのお子さんの行動特性の背景に関心があったため「担任したい」と管理職に申し出ました。

担任してしばらく様々な特徴を把握したうえでソーシャルスキルトレーニング的な指導を始め、行動上の特性はほとんどなくなりました。家庭内でも大声を張り上げたり好きなものを好きなだけ食べたりする行為に悩んでいたお母さんは、見違えるようになったお子さんに対し「先生はどんな魔法を使ったのですか?」と驚かれていました。

実はこのお子さんは周囲が思うより様々な能力が高いのではないか、と感じていました。人間関係におけるスキルがどんどん沁み込んでいくお子さんを見てその思いは確信に変わりつつありました。そしてある日、動物園に校外学習に行った時のことでした。一人千円のお小遣いを持たせてもらい、お弁当を食べた後に先生が一人一人に付き添ってお土産を買いに行く準備をして自由時間のことです。

「遠くへ行ってはいけないよ」との決まりを理解できるようになったため、この子どもには遠目で見守りながらもある程度自由にさせていたのですが、突然買い物袋をぶら下げて昼食場所に帰って来たのです。驚いて袋の中を見ると家族への土産物とレシートが入っていました!

私は驚いて「一人でお土産を買って来たの?」と聞くと不思議そうな顔をしていました。本人にとっては当たり前のことだったのでしょう。この子の社会性は極めて高い、それを誰も見抜けなかったので子ども扱いされることにストレスを高め暴れていたのではないか、と推察しました。中学生になり社会性が高まったのも別に私の指導が優れていたわけではなかったんだな、と改めて反省した次第です…。

このように特別支援教育を受けているお子さんの中には何らかの能力があっても周囲がそれを理解できていないケースが多いのではないか、と思います。目に見える能力が高いお子さんだけでなく、すべてのお子さんの隠れた能力開発ができるような教育体制、具体的にはより一層の少人数学級の設置などを文科省に進めてもらえれば、と思います。子どもはすべて「宝」なのです!

以上