カスタマーハラスメント(カスハラ)対策の続きです。保育園や幼稚園、学校に対し理不尽な要求をする保護者対策はカスハラ対策と呼ばれることはご理解いただけたと思います。おそらく東京都に続き全国の都道府県教育委員会が今後、カスハラ対策に関するガイドラインを作成するでしょう。保育園や幼稚園でも同様の準備が進むと思います。

 少し話はそれますが、みなさんはビジネス用語の「PDCAサイクル」をご存じでしょうか。PDCAサイクルとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字をとって名付けられた「作業の改善」を目指すサイクルを指します。

何かを始める際にはまず業務がスムーズに進むよう計画(P)を立て、それを実行に移します(D)。そして実際に業務が稼働する中で様々な課題が生じますが、その課題を明らかにするために常に評価(C)を行い、課題改善に向けて新たな計画(A)を練ります。そしてこの計画に沿った取り組みを始め、さらにまた評価から改善を重ねていくサイクルを限度を決めずに続けていき、常に最良の形を求め続けることです。

 私は大学の授業で学生によく質問をします。また宿題としてあるテーマに付きレポートを書いてくるよう指示を出します。例えば「もし小児ぜんそくの子どもが授業中に教室内で発作を起こしたら担任としてどうすればよいか?」「病気治療の副作用で身体的変化が現れた子どもに対しクラスでいじめや仲間はずれが起きたら担任としてどうするか?」といったような内容です。

 学生は授業で学んだことを活かしながら多くが適切な対応方法について回答するのですが、私は教科書やウエブサイトに紹介されているような内容だけでは満足しません。もちろん適切な対応方法が書かれていなければ減点しますが、加点のポイントとして学校教育でも「PDCAサイクル」を考えるように指導しています。

 子どもがぜんそく発作を起こしたら、発作を鎮めるための薬液吸入器などを使うとともに姿勢を確保し、安心感を与えると同時に他の先生方の応援を要請する。治療の副作用が容姿に現れいじめ等の対象になったとしたら本人や保護者の了解を得たうえでホームルーム等で取り上げ、病気の影響であることを学級の子どもに伝えたうえで理解を求める。こんな文章が書かれていればまずは合格点です。

 そしてさらに「事前にそういう事態が起きないように対策を徹底していく」という意味の文章があれば加点します。ぜんそく発作を未然に防ぐには常に教室内を清潔にし、換気を欠かさず、天候や気温、湿度の様子を注視しながら、発作が出づらくなうような事前の対策を徹底する、という回答が理想です。

 あるいは病気の副作用によるいじめ等に対しては、日常的な学級経営の中で常に人権感覚を養えるような具体的な指導を進め、病気に関わらずどのようなお子さんが学級内にいたとしても日頃から理解し合い支え合える学級にしていくというような回答があれば満点です。

「PDCAサイクル」でいえば「P(Plan)」(事前の計画)がしっかりしていれば「D(Do)」(実行)の時点で課題が発生する可能性は低くなり、仮に発生したとしても大事には至らず「C(Check)」(評価)を重ね、さらに未然防止策を含めた改善策「A(Action)」があればまた課題発生率は減っていくでしょう。

 この「PDCAサイクル」をぜひカスハラ対策(あまり好きな言葉ではありませんが…)にも導入してはどうでしょう。何か起きたらどうするかを考えることは重要ですが、それ以前にどのような保護者に対しても信頼される学校、教員となり、相談事に対しても親身になって対応していけば先に紹介したようなガイドラインは必要なくなるかもしれません。

 決して簡単なことではなく「それは難しいんじゃないか…」と思われた先生方も多いでしょう。学校現場は日に日に忙しくなり、またどんどんと新たにやらなければいけない仕事が増え続け、それでいて教員不足から病気でお休みになった先生の代わりが見つからず、ほかの先生方がその負担を肩代わりせざるを得ない状況になっています。

 それを十分理解したうえでのお話ですので、参考にしていただく程度でよいと思いますが、カスハラの未然防止策(Plan)の一つとしてまずは学校や学級の情報をメディア(SNS、学校だより・学級だより)などで発信していくことが重要だと思います。その際、学校に都合の良い情報だけでなく不登校の状況、いじめ問題の現状などについても個人情報に留意しながら正確に伝えていってはどうでしょう。

 学校や学級で起きた問題、課題に対し先生方がどう対応し解決していこうとしているのか、あるいは解決しづらいのかを正しく伝え、ご家庭や地域の理解、協力を得てみては?なかなか難しいかもしれませんが、私はその方が学校や先生方の真摯な姿勢に共感を得てもらえるのではないかと考えています。

 保育園や幼稚園、学校のウエブサイトを拝見することが多いのですが、昨今は管理職の先生や主幹教諭、教務主任といった先生方が積極的にリアルタイムでブログ記事を更新していく様子が見られます。本当にご苦労様です。合唱祭、運動会、修学旅行の様子など、子どもたちの笑顔があふれている写真を見ることができます。同時に、このようなことで力を貸してほしいといったような記事があれば、必ず手を差し伸べる方や学校の事情を理解する方が増えていくと考えています。

 カスハラ対策のない園や学校が理想です。ガイドラインは最後の手段として使われるレベルの存在であるといいですね。

以上