今日は「友だち」についてお話ししましょう。

 私は様々なつながりの中で、いまでも障がいのあるお子さんの保護者の方から直接相談を受ける機会があります。そして時々、お子さんが「友だちを欲しがっているがうまくいかない」というご相談を頂きます。さて、みなさんにとって「友だち」とはどのような存在をいうのでしょう。「友だち」と聞いて何人かの顔が思い浮かびますか?

 大学では教員を目指す学生たちに、発達障がいがあるお子さんが友だち作りに悩む動画を見せ「あなたがこのお子さんの担任だったらどうアドバイスするか?」と毎年同じ課題を出します。特に正解はありません。自らの体験を基にして「私ならこうする」という文章がしっかり書けていれば高評価をします。

 今年も受け持った学生たちに同じ課題を出しました。主人公のお子さんは発達障がいの影響で友だち集団の中でも自分本位の遊び方を周囲に強いてしまうことがあり、また衝動性の影響からか思ったことをそのまま口に出してしまい、友人が離れて行ってしまうことに悩んでいました。その様子から多くの学生が「本人の課題を解決できるよう担任として努力する」と回答していました。

 授業では学生から提出された課題に対し論評しますが、今年はこんな話をしました。「障がいがある人だけが努力を強いられる社会で良いのですか?」。本人の「自立や社会参加」を目指し、学校で子どもたちが指導や支援を受けることを特別支援教育と言いますが、障がいがあるお子さんの自立や社会参加は、本人の努力、そして成長のみに委ねるしかないのでしょうか。

 私は学生に伝えます。「もちろん障がいの有無にかかわらず子どもたちは人格の完成を目指し学校教育の中で成長していかなければならない。しかし、障がいのあるお子さんに対しては自身の努力と周囲の理解や協力があってこその自立や社会参加なのではないか。本人の努力が50、周囲の理解と協力が50、これを合わせて100になるような社会を私は理想と考えている」。

 つまり友だちを作りたい発達障がいのお子さんに対しては、本人のみならず周囲も協力しながら互いの人間関係力を高めていくような、そんな担任のアプローチが必要に思っています。この動画のお子さんの保護者は教室でお子さんの障がいについて語り、この子も努力するからみなさんも協力してほしい、と訴えかけました。

 人間関係を築いていく力は子どもたちが幼少期からともに遊んだり学んだりして獲得していくものです。もちろん楽しいことばかりでなく辛いことや悲しいこともあるのですが、その体験の中から子どもたちは適切なかかわり方を知り、自分に合った「友だち」を作ります。それは大人になってからも同様で、気の合う者同士で飲んだり食べたり遊んだりすることはストレス解消にもつながります。

 しかし今の日本の状況を見ると、障がいがあるお子さんが障がいのないお子さんと場を共にする機会は少なく、逆に言えば障がいのないお子さんが障害のあるお子さんとどう付き合えばよいのかを学ぶ機会も少ないのです。日本には交流及び共同学習という教育用語があり、特別支援学校や特別支援学級の子どもたちはできる限り障がいのない子どもたちと交流する機会を持とう、となっています。そしてその取り組みは各地で進んでいますが、それはあくまでも学校教育の中の話であり、地域で自然に障がいの有無にかかわらず子どもたちが遊びあう機会はそれほど多くないのかもしれません。

 障がいのあるお子さんに「友だちと遊ぶ」経験が少なければ当然「友だち」を作る方法も分からないでしょうし、もっと言えば「友だち」とはどういう存在なのかもわからないかもしれません。そして障がいのないお子さんが障がいのあるお子さんと自然に遊びあう機会がなければ当然、障がいのある友だちを作る方法も分からないまま成長するでしょう。社会人になり障がい者雇用で働く方と同僚になっても付き合い方がわからないかもしれません。そんなことではいつまで経っても「共に生きる」社会は成立しません。

 みなさんにとっての「友だち」とは?言いたいことが言い合えるけど言葉の最低限のマナーは守り、共に行動しても主張ばかりせず相手の話に耳を傾け、そんな他愛のない話ができる間柄だからこそ貴重な存在となる。友だちが体調を崩せば心配し、友だちに良いことがあれば喜び、趣味を共にしたり家族づきあいしたりする。各々の「友だち」の概念は異なるかもしれませんが、一言で言えば「心が近くにあって欲しい存在」という感じかもしれません。

 障がいのある子も当たり前に「友だち」が欲しい、でも「友だち」って何だろう、どうすれば作れるのだろう、どうすれば一緒に行動できるんだろう。このブログでも何度も伝えてきたとおり、そんな学びを意図的に体験でき、障がいのないお子さんとも上手にかかわりながらお互いに自然に「友だち」を知り、人間関係力を高めていく。それができるのは放課後等デイサービスかもしれません。積極的に地域の学童保育(放課後児童クラブ)などと遊びあいながら、専門性のあるスタッフが友だち関係の作り方を障がいの有無にかかわらず意図的に教えていく。そんな放課後デイがあれば理想ですね。

以上