こんにちは。今回も「夢の続き」を。
特別支援学校で学ぶことの中に「自立活動」というものがあります。難しい表現で恐縮ですが、文部科学省では次のように説明しています。「個々の児童又は生徒が自立を目指し,障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識・技能・態度及び習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う」。
簡単に言えば「障がいが影響して難しいことがあっても、自分からそれがバランスよくできるようになることを願って勉強していく時間」とでもいえるでしょうか。自分の体について理解したり、いつも落ち着いて過ごせる練習をしたり、あるいは人と意思を伝え合うコミュニケーション手段の獲得を目指したり。その目的は一人一人異なりますが、子どもたち自らが「ああなりたい」「こうしたい」と目標を持ちながら教職員と一緒に学んでいきます。
文部科学省の説明の中にある「主体的に」という部分が好きです。学業や仕事、趣味や生活の中で、特に興味関心もないのに他者から無理やりやらされることが自らを満足させることはまずありません。最近は教育虐待という言葉も聞かれますが、良かれと思って我が子に無理やり勉強を押し付けることは避けなければいけませんし、小さい頃は無条件に従っている子どももやがて成長すればその矛盾に気づき、反抗心しか残らない場合もあります。
障がいがあるお子さんも全く同じで、学校で教職員が良かれと思って無理強いする教育が彼らの自立に効果があるとは思えません。自立活動で語られている「主体的に」という言葉は「どんな障がいがあっても自分から『やりたい』という意思をもって取り組む」学習でないと何も身に着きません。
まだ「自立活動」と呼ばれる学習がなかった何十年も前の話ですが、こんなことがありました。養護学校(今の特別支援学校)で障がいの重いお子さんに食事を摂らせていたある教員が、口から食べることが苦手なお子さんに「生きるために必要」と言いながら口に食事を詰め、あごと後頭部を支えながら食事を噛んで飲み込む「トレーニング」をさせていました。
子どもはか弱く泣きながら抵抗していたのですが、大人の力にはかないません。私は「嫌がっているからほかの方法に変えた方がいいのでは?」と先輩であるその教員に伝えました。そしてこう言われました。「じゃあお前はこの子が口からものを食べず寿命が短くなってもいいのか?」。先輩にそう言われ返す言葉が当時はありませんでしたが、いまなら返せます。「この子は食事がより嫌いになるかもしれない。食事の時間は本来、親しい人と楽しい時を過ごすものであって、決してトレーニングの場ではない。むしろこの子はいまよりも食べなくなり健康に影響が出るのではないか。自分から『食べたい』とする意欲を持ってもらうことを優先すべき」。
一昔前の障がいがあるお子さんへの教育では、教職員が良かれと思って本人の気持ちや意思を確認せず「訓練」を強いる行為が見られました。しかし、そのような行為により「生きる力」が身に着くことはなかったのではないでしょうか?21世紀になり、人の主体的な生き方が重視されるようになり、また多様な生き方も認められた結果、子どもたちに何かを無理強いするような教育は減っただろう、と信じています。
ただ、少し気になるのは障がいのある子どもたちが望むこと、やりたいこと、目標とすることを見つける時間や場所がいまの社会にはまだまだ少ない点です。前回のブログでも触れましたが、子どもたちが様々な経験に触れてこそ警察官になりたい、野球をやりたい、サッカーをやりたいなどの夢や希望が生まれ、じゃあ今これを頑張ろう!、とする主体性が生まれてくるのですが、その機会は十分に保障されているでしょうか?
できる、できない、わかる、わからないということは重要なことではありませんし、それは私たちが重視する事柄ではありません。最初から「どうせできないから」「どうせわからないから」と決めつけてしまっては教育や医療、福祉は否定されてしまいます。目の前にいる障がいのあるお子さんを「何もできない」「わからない」と決めつけてしまうと扱いは雑になり、教えることや支えることに意味を感じなくなってしまいます。ひょっとしたらそれが人権侵害や不適切な行為につながっているのかもしれません。
もし子どもたちに夢や希望を与える選択肢を学校や家庭だけで提供しきれないのであれば、そこは放課後等デイサービスの出番ではないでしょうか?学校と違って学習指導要領などには縛られませんし、家庭と違って仲間と育み合うことができる空間です。そしてさらに放課後に障害のない地域の子どもたちとも遊び合い、芸術やスポーツに触れあい、社会を学ぶことができる。それが放課後等デイサービスの強みだと思います。
そしてそこから「ああなりたい」「こうしたい」といった夢や希望が子どもたちに生まれたら、それを育てていく。そんな放課後等デイサービスが私の理想です。
以上